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飛白は少し乱暴に裏子の背中を押した。 バランスを崩した彼女はあわててテーブルに手をつき、身体を支える。 大きく開かれたブラウスからこぼれ落ちた豊満なバストが、重力に引かれてぷるん、と揺れた。 「何すんだっ!」 肩越しに振り返り、飛白の顔を睨み付ける。 照明を落とした店内は薄暗く、飛白の表情はよく見えない。ただ、意地悪くにやにやと笑みを浮かべた口元だけはやけにはっきりとわかった。 「負けたら何でも言うことを聞く、って言ったのは裏子ちゃんだろう? 僕は勝負に勝った。だから君を自由する権利がある。違うかい?」 裏子は唇を噛んだ。 売り言葉に買い言葉だった。最初はいつも通りの些細な言い争いだったはずが、いつの間にか飛白と勝負をすることになっていた。 「負けた方は勝った方の言うことを何でも聞くんだからな!」 「もちろん。それでいいよ」 普段とは違う飛白の瞳の輝きに気付いたのは、勢いのままに勝負を承知した後だ。 勝ち目なんてあるはずがなかった。純粋な力の勝負では、裏子と飛白ではレベルが違いすぎる。事実、それは勝負にすらならなかった。 「はいはい。アタシの負け。完敗。で、何させるの? 肩もみ? 背中でも流して欲しい?」 我ながら馬鹿なことをしたと悔やみながら、それでも精一杯虚勢を張る。 しかし、飛白の言葉を聞いたとき、裏子は自分の耳を疑った。 「エッチしよう」 「……は?」 「だから、エッチだよ。セックス。キスしたり胸を揉んだり大事なところを指でいじったり……」 「説明しなくていいっ!」 裏子は頬を真っ赤に染めて怒鳴った。 セックス? 飛白とアタシが? 「バ……ッ、何バカなこと……! やるわけないだろ! そんなの!」 「負けたら何でも言うこと聞くって言わなかったかい?」 裏子は言葉を詰まらせた。 「そ、それは……っ」 「ねえ、裏子ちゃん」 飛白の切れ長の目がすいっと細められる。闇色の瞳が、じっと裏子を見つめた。 裏子は背筋に冷たいものが這い上がるのを感じた。 「もう十分わかってると思うけど、力ずくでキミを押し倒すのはとても簡単なんだ。 でも、僕はそういう野蛮なのは好きじゃない。 やっぱりこういうことは、二人の合意の上でするべきだと思わないかい?」 「……お前。それだって立派な脅迫だろ」 飛白はいつもの人を食ったような笑顔のまま、首を左右に振る。 「とんでもない。こうやってキミの意思を尊重してるじゃないか」 裏子は深い溜息を吐いた。 この男は最初からそのつもりだったのだ。 逃げ道なんてどこにもない。そもそも、逃げたりなんかしたくない。 そうだ。犬に噛まれるようなものじゃないか。変に意識する方がおかしい。 アタシは相手が飛白だからって意識したり――しない。するハズがない。 「わかった」 裏子は目を閉じ、両手を広げた。 「好きに――したら?」 テーブルに手をつき、お尻を突き出した裏子の背後に回り、飛白はスカートをまくり上げた。 「あっ……!」 白く形のいいヒップを包む薄紫のショーツが顕わになる。 飛白は愛おしむように、片手で裏子の尻を撫でた。吸い付くように滑らかな肌に手のひらを押しつけ、何度も何度も。 「ひ……」 両手で左右の肉をつかんだ。円を描くように揉み回すと、ぷにぷにと丸い双丘が形を変える。それにつれて、薄布に隠された谷間もこすられ、広げられる。 下着の中央にはすでに蜜が滲み、丸い染みをつくっていた。飛白はにやりと唇を歪める。 「裏子ちゃん。濡れてるよ」 「や……そ、そんなの嘘っ」 「嘘なもんか。ほら」 飛白は指先で染みの真ん中をとんとんとつついた。その真下にはもちろん、裏子のスリットがある。濡れた布が密着し、その形が浮かび上がる。 「ふぁ……や、だめ……!」 「胸揉まれるの、気持ちよさそうだったからね。あの時からもう濡らしていたのかい?」 「そんなこと……ないっ……!」 今度は指先を揃え、切れ込みに沿って上下に動かす。くち、くち、と布とひだが触れ合う濡れた音。下着は既にその用途を為していなかった。 「ん……ふぅ……」 下腹部にじんわりと広がる甘いしびれ。布越しの鈍い刺激が微弱な電流となって脊髄を這いのぼる。裏子は身体の奥から熱い滴が湧き出すのを感じた。 やだ……アタシ、感じてる……! 頭の中のまだ冷静な部分が快感を拒絶しようとする。だが、快感は徐々に大きなうねりとなって意識を支配していく。 だめだ。声なんて出したくない。感じてるなんて知られたくない。飛白なんかに! 唇を噛み締め、喉から漏れそうになる声を押し殺す。 「この下着はもうダメだね。邪魔だから取っちゃおう」 飛白の言葉を、快感に呑まれかけていた裏子はすぐには理解できなかった。 飛白はショーツの左右の腰の部分に爪を立てると、つい、と線を引いた。まるで紙に刃を走らせたように布が裂け、ショーツははらりと床に落ちる。 敏感な部分が直接外気に触れるのを感じて、裏子はようやく事態を理解した。 「ちょ……だ、ダメ、いま直に触られたら……っ!」 言い終わる前に、強烈な電撃が裏子の身体を震わせた。飛白が彼女のそこに唇を押しつけたのだ。 「っあ……!」 ぴん、と背中が弓なりに反る。目の奥で星が瞬く。全身の筋肉が緊張する。裏子は軽い絶頂を迎えてしまっていた。 なんで? どうしてこんなに感じるの? こんなの……変だ。 がくりと首をうなだれ、荒い息を吐きながら、ぼんやりとした頭で思う。 「……飛白、アンタ……」 「なんらい?」 裏子のスリットに唇をつけたまま、飛白は返事をする。その刺激もまた、裏子の背筋を震わせる。 「っ……! アタシに……何か、したでしょ……」 「エッチなことしてるけろ」 「そうじゃなくてっ……! アタシに変な術……かけたんじゃないの……!?」 飛白はようやく唇を離した。 「術?」 「こんなに感じるの、変よ……この卑怯者……!」 飛白はにやりと笑みを浮かべた。 「へえ。裏子ちゃん、そんなに感じてるんだ?」 「それはっ……! だ、だからアンタが術で……」 「術なんてかけてないよ」 「え……」 裏子は緩慢な動作で振り向いた。ぼんやりとした視界に、悪戯っぽい笑みを浮かべた飛白の表情が映る。 「術なんてかけてないんだよ。誓ってね。 二百年も生きてるんだし、女の子の扱いにはそれなりに自信はあるけど」 そこまで言って、飛白は微笑んだ。それは普段とは違う、優しい微笑。 「もしかして裏子ちゃん、僕とこうなること、ずっと待ってたのかい?」 一瞬、きょとんと飛白の顔を見つめてしまった。 言葉の意味を理解した途端、カアっと頬に血が上る。 「バ……ッ、バカ! そんなわけ……あくぅっ!」 最後まで言えなかった。飛白がさらに強く裏子の秘唇に吸い付いたのだ。 舌を押し込み、ひだをかき分け、すくい上げる。ぷにぷにと弾力のある粘膜を唇にはさみ、吸う。 「ひぁ……や、やだっ! ああっ!」 伸ばした舌先が裏子の入口をつつく。その奥からとろとろ湧き出る粘液が舌に絡みつき、唇の端からあふれ、太股を伝う。 すでに声を殺すことなどできなくなっていた。次から次へと押し寄せる快感の波に翻弄され、裏子は甘い嬌声を上げた。 「ダメッ、ダメ、それぇ……! ひあん!」 莢に隠されていた真珠を剥き出し、吸い付く。 「ぁ……!」 発作のように裏子は仰け反る。痛みと紙一重の快感。全身を電流が駆けめぐり、膝ががくがくと揺れる。 飛白は容赦なく肉芽を苛み続けた。唇で挟み、吸い、硬く伸ばした舌先で周囲をなぞり、弾く。 「ぅあっ、ああっ、や、あ、ああっ!」 びくびくと腰が震える。秘所はすでにあふれていた。太股を伝い落ちた愛液はストッキングを濡らしている。 飛白はようやく顔を離した。唇の周りはべとべとに濡れている。それを拭いもせずに、飛白は立ち上がった。 チャックを下ろし、硬くいきり立った幹を取り出す。先端を入口に押し当て、背後から裏子に抱きつき、乳房を両手に収め、うなじに唇を寄せて囁く。 「入れるよ。裏子ちゃん……」 普段の飛白なら、初めて抱く相手にはもっと気の利いたセリフを言っただろう。飛白にも、もう余裕がなかったのだ。 飛白の言葉に、半ばうつろだった裏子の表情にわずかに意識が戻る。裏子は黙ったまま、こくりと頷いた。 飛白は腰に力をこめた。ぐぐっ、と抵抗感が幹に伝わる。ゆっくりと、飛白のものが裏子の胎内へ呑み込まれていく。 「あ……あ……ぁ」 熱い吐息と共に裏子の喉から声が漏れる。あふれた粘液がとろとろと太股を垂れ落ちる。 やがて、先端が最奥にたどり着いた。 「入った……よ」 「……うん……」 二人はそのまま動かなかった。 裏子の中は熱かった。隙間無くくるまれた肉の竿に、びくびくと刺激が伝わる。いま動かせば果ててしまいそうなほど気持ちいい。 飛白は苦笑した。これではまるで童貞少年ではないか。 裏子もまた、突き入れられた灼熱の棒から伝わる刺激に耐えていた。熱い。硬い。そして、気持ちいい。 これが、動き出したら……。 裏子は熱に浮かされたようにどろどろに溶けた思考の中で、快楽の予感に身を震わせた。 「……動か……ないの……?」 「……動いてほしいのかい?」 「……ばか……ああっ!」 飛白が一気に腰を引き、そして突き入れた。裏子が喉を反らせる。 「そんな、急に……!」 「じゃあ、ゆっくりにしようか」 からかうような響きの言葉の後、飛白はゆるゆると腰を動かし始めた。ゆっくりと、深く、浅く。 「ふぁ……あん、あっ、あ、これ、いい……」 深く繋がり合った二人の部分がぐに、ぐに、と形を変える。先端がひだをかき分け、肉の壁が幹を包み込む。あふれ出る愛液がぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てた。 たっぷりと重量のある乳房を両の手で揉みしだく。硬く尖った乳首を弄る。 「いやらしい……胸だ。こんなに……柔らかくて……」 「ちが……アタシ、いやらしくなん、て……ない……!」 「嘘だ。だってこんなに……どろどろにあふれてるじゃないか……!」 いつの間にか腰の動きが激しくなっていた。突き上げるたびに手の中から乳房が逃げ出そうとする。飛白はちぎれるほど強く裏子の乳房を握りしめた。 「やぁ……痛……!」 じゅぶじゅぶと粘液がはじける。腰と腰がぶつかり合う。背筋をぞくぞくと寒気が這い上がる。 「ふぁ、あ、あ、んっ、んぅっ!」 裏子の喉から途切れ途切れに嬌声が上がる。身体の奥を突き上げられるたびに目の奥で火花が散る。がくがくと折れそうになる膝を必死に踏みしめる。 「ダメ、もう、あ、ダメぇ、アタシ……っ!」 「僕も、もう、イくよっ、裏子ちゃん……!」 初めて聞く飛白のせっぱ詰まった声。裏子の中の幹が膨れ上がった。 「やだ、来る、来ちゃう、あ、ふぁ、ああああっ!」 視界が真っ白になる。指先まで電流が走る。飛白のものを、きゅうっと締めつける。 「く……キツい……!」 どくん、と先端から熱い塊が飛び出した。びくびくとしゃくり上げながら、裏子の子宮を何度も何度も打ち付ける。 背後から裏子の身体を抱きしめ、髪に顔を埋める。 長い、長い射精。胎内に収まりきれずにあふれ出す。 「いっぱい……出てるよぉ……」 あふれる快感にとろけながら、裏子は呟いた。 全身を甘いしびれが包んでいる。耳の奥がじんじんする。 腰から下がなくなってしまったかのように力が入らない。それでも、胎内でひくひくと脈動する飛白の感覚ははっきりとわかる。 しばらくの間、二人はそのまま荒い呼吸を繰り返していた。触れ合った肌を通して互いの体温を感じる。 「こうなることをずっと待っていたのは……」 「……え?」 ぼんやりとうつろな表情のまま、裏子は聞き返した。 「こうなることをずっと待っていたのは、僕の方かも知れないな……」 「……ばか」 |